自分のことは諦めても、社会のことは諦めないであげて下さい。

THE PRISONERのDAYDREAMERを延々聴きながらなんべんも書き直してる。そうでもしなきゃ書いてられないことを書こうとしてる。
今度の選挙では古い知り合いにもたくさん電話した。もう何年もメールすらやりとりしてない奴、酷いのになると十年以上とか。
「よう久しぶり、今大丈夫?」「今なにやってんだよ」と最初の挨拶してる時、すごく相手も喜んでくれてるのが分かる。ありがたいことだよなー、こっちも嬉しいんだよ凄く。だから、だから次のひとことを言うのが辛くなる。もう「本題」なんて触れずに昔話だけしてようか、なんて気持ちも掠める。
「でさ、選挙あんだろ?参議院選
「あ?ナニ?」
「選挙だよ、選挙行く?オマエ」
もうこれだけで相手のテンションがガクン、と下がっちゃうんだもの。
分かり切ってる帰結なんですもの。
オレの知り合いなんて好きなことばっかやってたような奴ばかりだからロクな人生歩いてない奴が多い。結婚しても非正規、結婚できず非正規、精神病院入院歴ありとか、リアルでノーフューチャーな奴ばかり。あいつら以上にロクでもない人生歩んでるオレが言うんだから間違いない。大抵が貧乏してて「人生設計」なんて言葉聞くと吹き出してしまうような奴ばかりだ。ナメてるわけじゃない。まじめに考えるのが死ぬほど辛いくらい先が見えない、先がない人生ってこと。
そいつらに「誰それに投票せんか?」「国の未来を考えてくれ」と言うのはね、正直すげえツラいのだわ。
お先まっくら明日をも知れず、な毎日やってるとまず余裕がなくなる。んで世界がつまらないものに見えて来る。幸せな奴が疎ましくなる。浮かれ騒いでる奴が許せなくなる。しまいにゃ「隕石でも落ちてきて日本滅亡とかしちゃえばいいのに」なんて捨て鉢な気分になる。別に異常なことではない。多かれ少なかれ誰でも持ってるはずの捨て鉢さが大きく頭をもたげるってだけ。多くのネトウヨくんたちもそういう人多いんだと思う。いいじゃんもう、戦争でもなんでもしちゃえよ、明日仕事行かなくていいようなことが起こるならもうどうなってもいいや、という気持ちにはオレにも身に覚えがある。身に覚えどころかしょっちゅう、そんなことばっか考えてたようにすら思う。
大人になるってのは何かをあきらめることだ、なんてJ-POPじみた命題に頷いてさ、それでもまあ慎ましく、死ぬまでの間になんかいいことあればいいな、くらいの望みを持って、たまにみんなでバカなことやって。いや、こんな望みだって全然慎ましくないな。こんな望みすら持てない人がたくさんいることを、この十年でいっぱい知ったよ。いい年こいて「あきらめんなよ!」とかアツい言葉ももう口に出なくなった。オレ自身自分のいろんなことを諦めてる。
けど、自分を諦めることと、世界に絶望することは違うだろ?
俺たちだって笑ってられた時期があっただろ?当時の世界が、社会が俺たちをそうさせてくれたんだよ。楽しかったろ?あの宝石みたいな時間を過ごさせてくれた恩ってもんがあるんじゃないか?俺たちには、この社会に対して。
今の若い子はうちらみたいにデタラメには生きられずにいるよ。そういう社会になっちまったから。自分らが社会からもらったものを、今の若い子たちに受け渡すことができなかったから。
政治とか言ってもさ、実際立派に政治の世界でゲンロンしちゃってる奴らは今でも大体オカネモチだよ。デモ行った帰りにうちらには手の出ないスイーツなんか食べに言っちゃってる人の方が確かに多いし、あいつらは俺らみたいなクズのことなんか大抵嫌いだよ。
けど、そんなもんは飲み込まなきゃいけない程度に自分らは、この社会からいろんなものを貰っただろ?楽しませてもらったろ?あの最高にデタラメな日々を過ごせただけで、今がいかにビンボでも俺たちは勝ち組なんだよ。今の若い奴と話してみりゃお前もそう思うはずだ。勝ち逃げは許されないんだよ。
そして何より、お前が世界に絶望してたとしても、俺はお前を信じてんだよ。どんなにバカでも筋を通す奴だって信じてんだよ。
久々の電話がこんな話題で悪かったな。近々必ず、またどうでもいいような電話するから、そんときは心置きなくバカばなしするから、約束するから、
選挙行ってくれ。
俺らみたいなバカが生きてられる日本を残す、たぶん最後のチャンスなんだ。