岩手の「指定廃棄物」

岩手における「指定廃棄物」の扱いがどうもよく分からなかったためまとめて置く。最初に一応「指定廃棄物」の説明をしておくと、放射能をかぶったためゴミとなった稲藁、土砂などのうち放射性セシウム濃度が1kg当たり8000ベクレル超のものを指す。管政権最後の置き土産である放射性物質汚染対処特措法で「国が責任を持って処理するもの」とされ、それを受けた環境省が「指定廃棄物の今後の処理の方針」で話を具体化させた。
その流れとしては、まず収集された「指定廃棄物」は可燃性、不燃性に分別され、可燃性のものは「仮説焼却炉」で焼却、体積を減じた上で最終処分場へ。不燃性のものは粉砕の上で最終処分場へ、ということになっている。原則として「既存の廃棄物処理施設(焼却炉、管理型最終処分場)を活用することが望ましい」とされていて、かつ「各都道府県がその区域内で出た指定廃棄物を処理する」ということになっている。
まず湧くのは「既存の廃棄物処理施設(焼却炉)で、放射能は四散することにならないのか、という疑問だが、一応環境省福島県鮫川村、岩手県一関市での実証実験で「大丈夫」との結論を出していた。おしどりマコさんの鮫川村レポートを読む限りとても大丈夫と言えるものとは思えなかったがそこについてはまずは置く。
次に湧くのは「各県処理といいながら最終処分場の問題は宮城や千葉でしか騒がれていない。なんでだ?」ということ。少なくとも岩手県については、汚染への対応が必要とされる岩手、宮城、福島、新潟、群馬、栃木、茨城、千葉、東京の9都県のうち「指定廃棄物の量が少ないため既存の施設で対応する」という扱いになっていたらしい。同様の扱いになったのは岩手の他新潟と東京。
じゃあ、ILCの会見とごっちゃにして住民説明が行われたという一関狐禅寺地区に建設予定の処理施設はなんなのか、ということになるが、この処理施設もどうやら県にとっては「ただの産業廃棄物処理場」という位置づけであるらしく、それを国が定めた方針のとおり「既存の施設」として利用して処理してしまおうと、そういうことであった。これを報じた河北新報の記事が非常に分かりにくい。報道してくれただけでもありがたいことではあったが。

狐禅寺地区に建設が計画されている福島第1原発事故で発生した岩手県内の指定廃棄物(放射性セシウム濃度1キログラム当たり8000ベクレル超)などの仮設焼却施設と新ごみ焼却場、最終処分場に関する地元説明会で18日夜、語った。

岩手日報の記事を照らし合わせてみるとやっと分かる。新たなごみ焼却施設の計画と指定廃棄物焼却施設、そして最終処分場までいっしょくたに(しかもILCの説明会で)語ってしまったことが混乱の原因であったらしい。けどマアつまるところは変わらないんだよね。環境省の実証実験に基づいた「仮設焼却施設」で可燃性の指定廃棄物は燃やされ、産廃と同じ最終処分場で(1kgあたり4000ベクレル以下という基準で)埋められる。東京と新潟でも同じようなことになるんじゃない?
多分宮城でもまず「焼却施設」の問題があるはずだ。その上で「最終処分場」のことが紛糾しているわけだが、岩手では「量が少ない」という本当だかなんだか分からんような理由で指定廃棄物専用の最終処分場すら造られない、というのが現実であるらしい。可燃性のものは生活ゴミといっしょにガンガン燃やされるのだと。ある意味宮城より悲惨と言えなくもない。
それにしてもこの納得のできなさはなんなのか。オオカミ少年にダマされつづけた村人の気分に近く、国や自治体の出して来る数字や「安全」なるタームが全く安心に繋がらない。要するに彼らのことが全く信用できない。だからこそ紛糾するのだが、どこかで処理が必要なことくらいはみな、分かっているのである。
国とか自治体の人は「言うことを聞いてくれない」「論理が通用しない」などとスネてる場合ではないよ。あんたらの現状は「信用されず、部下が誰も言うことを聞いてくれなくなった上司」以外の何者でもない。部下なり住民なりからの信用を勝ち取るだけのことをしてこなかった100%の自業自得であることくらいは理解されよ。その上で、みなの信用を得るためにまず何をするべきかを考えなければならないはずだ。「いくら金出せば黙るだろうね、あいつらは」みたいな発想してる限りこの泥沼は続くぞ。