高野秀行とドリトル先生

「旅・本 トークショー 第一回 高野秀行」in TSUTAYA盛岡店というのに行って来た。どうでもいいんだが、「TSUTAYA盛岡店」って、まるで盛岡にTSUTAYAがひとつしかないみたいで何とも言えない寂寥感がある。TSUTAYA書店が盛岡進出して一店目という意味なのだが、これまで頑張って来たレンタル店TSUTAYAにちっとは花を持たせてくれてもいい。いや、まったくもってどうでもいいが。
会場は思った以上に狭く、しかも入場料は1080円。生々しくも新幹線で盛岡に来る様子をツイートしていた高野氏にギャラ入るんか?と心配になる。結局客数40人くらいだっただろうか。いや、これまた、どうでもいい話ではある(客としては)。
高野氏は本当に想像したまんまの感じであった。写真まで見ている作家に、自分で勝手に声を振っているというのはよくあることで、その勝手にこしらえた「脳内声」と本人声があまりに近くてさもありなん。わりと、どうでもいい話ではあるが。
さて、バカ旅行をひたすら綴って来た彼が、その種の好き者たちだけでなく一般層に強くアピールすることになったのは去年出た「謎の独立国家ソマリランド」からだろう。客層がだからさっぱり想像できなくて、日経とか読んで喧々諤々しているような経済人なんぞが来たらイヤだなー、と思っていたら、会場入りする人たちみな「うわー、来ちゃったよオレ(アタシ)」という照れ笑いを浮かべており、それはまるで身内に隠れて仮装パーティとかに参加すればこんな顔をするのでは、みたいな照れ笑いで、どうやら皆が皆高野氏ワールドを自分同様に楽しんで来た人らしいと分かった。なんとも、嬉しいのである。
彼の話は本以上に強烈。ムベンベ探索行の時の動画や、西サハララソン大会の動画など、本だけでは味わえないものもあり、あっという間の一時間半だったのだが、そういう講演に対して割と場馴れしている彼の様子だけが意外だった。
話の最後、オススメ本という書店企画らしい課題にドリトル先生を挙げていた彼。旅に出たドリトル先生は動物の言葉を覚え、動物と友達になり、動物の力を借りて、そうやって旅行して来た。「そんな彼のように」自分は旅行して来たんだよ。というまとめが目ウロコ。
なぜ辺境か、なぜバカ旅行なのか、といった観点でばかり考えて来たものだが、ドリトル先生がなぜ旅行したのか、なんてことは本当はどうでもいい話。自分らはそんなドリトル先生が大好きで、鳥の言葉を覚えたかったり、巨大カタツムリにワクワクして来た。そこに意味づけもへったくれもない。そんな生き様だからこそ、自分はいつか見た夢を追うように彼の本を読んできたんだな。
そして、「異文化」との出会い、付き合いはこのようなものであって欲しいと、今になって強く思うのである。知らない人、違っている人と「友達になる」この感覚は万国共通のものだろう。王欣太が「達人伝」の新刊に込めたもの。「違っているのが嬉しい」それだけでいい。