お答えします

高校生が特定秘密法案反対のデモをしたそうな。

「特定秘密法案に賛成する大人よ、ここで理由を述べてくれ!」高校生

ええお答えしますとも。ただし「特定秘密法案に賛成する大人」ではないし、自民に投票もしていませんが。
特定秘密法案が「現代の治安維持法」だ、という声をあなたがたなら聞いたことがあると思います。治安維持法は戦時下の国内の言論統制に最大限活用され、その尖兵として活躍、というか暗躍したのが憲兵でした。そしてその憲兵隊を率いていたのがいわゆる「特高」であり、現自民党幹事長、石破茂の父親はその特高のボスでした。そのことをまずじっくりと噛みしめて下さい。そして
石破茂という人に「特定秘密法案は現代の治安維持法ではないか!」と言っても、彼の耳にそれは抗議とは聞こえない
という事実に気付いてほしいのです。
戦後、作られるドラマや映画、漫画などあらゆる物語において憲兵という存在は悪者でした。こないだの宮崎アニメでも出てきましたね。そういう世の中を、憲兵のボスであった父を、それでも尊敬していたであろう石破氏がどのような気持ちで眺めて来たかを一度、じっくり考えてみる必要があると思いませんか?
家庭環境というものは、若いうちは気付かないものですが、実は人の世界観に果てしない影響を及ぼします。私は大学に行きましたが、たぶん父が大学出でなければそんな場所に行こうとも思わなかっただろうと40を過ぎた今になって思います。家が魚屋で学問に縁など全くなかったはずの友人が、すべて自分のやる気ど努力で大学に入りましたが、私は彼には決して敵わない。私が子供の頃父から有形無形にもたらされて来た学問への興味を、彼はすべで自分で見つけ出して来たのですから。どこかに統計もあったと思いますが、大学に進学する高校生とその親の学歴にははっきりとした相関があるそうです。学問に縁のない家庭に育った多くの子供にとって、大学なんて世界は「自分の一生には縁のない世界」になることを、私は「彼らにとっての大学って、自分にとっての政界みたいなもんなのだな」という連想をもって理解することができます。
では父が政治家である家庭の息子ならどうでしょう。そして、その父のやって来たことが世間では「悪」とみなされていたとしたらどうでしょう。大学という世界を「縁がないなー」と思う高校生にも、代わりになる「自分にとっての世界」がある。ところが石破という人の「自分にとっての世界」のうち、1945年までのことはすべて「悪」になってしまった。私なら耐えられないかもしれないと思うのです。ちなみに特高上がりの自民党員は戦後大量にいます。石破茂の父石破二朗も戦後、政治家として活躍しました。
長い前置きになりましたが、石破氏他のひとたちにとって「特定秘密法案」とはなんなのか、私はこういうことを抜きに語ることはできないと思っています。
治安維持法の尖兵である特高及び憲兵は、いわゆる「アカ」の排除に執念を燃やしました。それに付随して起きた多くの悲劇、行き過ぎ、などなどを頭から捨象して「大日本帝国はアカを取り締まった」という事実のみを考えると、それは実は当然であったとは言えるのです。だって当時の共産主義者軍国主義国家である大日本帝国を転覆させようとしていたのですから。国家運営に関わる者が、その国家を転覆せしめんと動いている者を許すはずがない。多くの行き過ぎ、やり過ぎ、拷問といったことに目をつぶれば、彼らが「国を守る」ために汗水たらして働いたというのは間違いなく事実なのです。その事実だけは認めてやりませんか?やりすぎたし、多くの悲劇を起こすべくして起こしたし、戦後ほとんどの庶民にとって「最悪のクソども」として記憶された彼らですが「国を守りたい」という気持ちだけは認めないわけにはいかない。なぜって、そうしないと石破氏はじめ今の政府の連中と会話が成立するとは思えないからです。会話を成立させることができない限り、変えられないからです。
太平洋戦争時、じゃあ、彼らが守ろうとした「国」とはなんであったか。実はこのことが書かれている歴史書は存在しません。それはもはや歴史学ではなく文学のカテゴリだからです。けどそのような文学的な熱狂をもって国家という組織が動いていた、ということは多くの史料が証言するところです。その熱狂の最前線に立っていた、そして本当の戦線で命を危険にさらす必要のなかった、当時の「お偉い」人たちを父に持つ人の多くが今、国のかじ取りをしています。彼らにとっての「国」とはなんなのでしょうか。このことこそ、私があなたがたに一番考えてもらいたいことだったりします。
日本の産業は衰退しました。唯一国際競争力を持っていた製造業もクルマはダメになり、ITも隣国に抜かれています。震災及び原発事件(事故と呼ぶ気にはなれない)で日本産の農産物の価値はだだ下がりです。超高齢化社会は加速度を増すばかりです。そんな中、実は一番無難にカネになるのが軍事産業なのです。歴史を学んだ者なら、国というものは傾くと戦争を始めるものだと常識のように知っているでしょう。国政への不満のはけ口を隣国に誘導し、しまいにはコロシを大々的に始める。全世界でもれなく行われて来たことが今の日本でも起きている。というのが多分最も現実に即した説明になると思います。ぶっちゃけアメリカの犬になって軍需するしかない。そう政府が判断したと考えて間違いないのではないかと思います。
だからこその特定秘密法案なのではありませんか?法案そのものの是非はまず置いて、そういう現状認識は必要ではありませんか?治安維持法の元拷問に明け暮れた奴らも「お国のために」と思っていたのと同じように、現政府の奴らも「国を守る」ためにそれが最良と判断してしまった。原因は主権者たる我々なのです。くやしいですが。
だから、特高チルドレンのDQN政治家の暴走を止めるには「治安維持法の再来だからダメ」では逆効果。「知る権利を奪うな」では「現実が見えていない」と判断される。
「戦争なんかしなくても日本は立派にやっていけるよ。そして、あなたたちが思っているより戦争ってよっぽど悲惨なんだよ」
と我々が胸を張って言えるようになるしかないのです。
このような日本にしてしまった自分ら、つまり現在30代後半から70代くらいまでの世代は、いずれ「日本史上最低最悪の世代」と呼ばれることになるでしょう。もはやその汚名を逃れられるとは自分は思っていません。
ただ、若い世代から突き付けられた冒頭の問いかけに包み隠さず答え、今の自分でもできることを最大限やろう、と思うのみです。
こんな日本に生まれさせて、本当にごめんなさい。